在留特別許可に係るガイドライン
令和6年3月改定(※)
(※)改正法の施行と同時に運用を開始します
第1 ガイドラインの位置付け等
1 改正法における在留特別許可に係る規定について
令和5年入管法等改正法(以下 「改正法」といいます。)により、
在留特別許可の申請手続が創設され、その考慮事情が法律上明示されました。
改正法により、外国人が退去強制対象者に該当する場合であっても、
(1) 永住許可を受けているとき、
(2) かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき、
(3) 人身取引等により他人の支配下に置かれて
本邦に在留するものであるとき
(4) 難民の認定又は補完的保護対象者の認定を受けているとき
(5) その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると
認めるときは
当該外国人からの申請により又は職権で、当該外国人の在留を特別に
法務大臣が許可することができることとされました。
ただし、当該外国人が、以下の場合に該当する場合は、
人道上の配慮に欠けると認められ在留特別許可はされません
一年を超える実刑の前科を有する者
オーバーステイ以外の退去強制事由に該当する者
在留特別許可の許否判断基準項目が以下のとおり、明示されました
在留を希望する理由
家族関係
素行
本邦に入国することとなった経緯
本邦に在留している期間
その間の法的地位
退去強制の理由となった事実
人道上の配慮の必要性を考慮するほか
内外の諸情勢及び本邦における不法滞在者に与える影響
その他の事情
我が国での在留を例外的・恩恵的に認めることが好ましくない者であったと
しても 例えば、当該外国人が、本邦で疾病の治療を受けている者で、相当期間
本邦で治療を受けなければ生命に危険が及ぶ具体的なおそれがあることなど、
在留を許可しないことが人道的見地から酷に過ぎると認められる事情を
いいます。
2 在留特別許可の性質について
在留特別許可は、従前から、本邦からの退去を強制されるべき外国人に
対して、例外的・恩恵的に行われる措置であり、その判断は、法務大臣の
極めて広範な裁量に委ねられており、在留特別許可をするかどうかについては、
個々の事案ごとに諸般の事情を総合的に考慮した上で判断されるとされて
いました。改正法も、このような在留特別許可の性質は、変わりません。
3 ガイドラインの位置付けについて
出入国在留管理庁は、在留特別許可の判断の透明性を高めるため、
在留特別許可に係るガイドラインを策定・改定し、
考慮する事項を例示的に示してきたところです。
今般、改正法の施行により、前記1のとおり、申請手続の創設に併せて
考慮事情を法律で明確に示し、
考慮事情について当事者に十分に主張し得る機会を保障する
こととしたことに併せ、
当該各考慮事情の評価に関する考え方を示すこととしました。
在留特別許可に係るガイドラインも改定は、在留特別許可に関する
従来の判断の在り方を変えるものではありませんが、
特に、我が国に不法に在留している期間が長いことについては、
出入国在留管理秩序を侵害しているという観点から消極的に評価される
ことを明確にしました。
他方で、本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性を
積極的に評価すること、また、その間の生活の中で構築された
日本人の地域社会(学校、自治会等。以下「地域社会」といいます。)
との関係も積極的に評価することなどを明確にしました。
第2 入管法第50条第5項に掲げる考慮事情の評価に関する考え方
1 在留を希望する理由
当該外国人が我が国での在留を希望する理由は、
在留特別許可をするかどうかの判断において基本となるものですが、
単に在留を希望する理由があるだけではなく、以下に掲げる事情についても
考慮されます。
2 家族関係
家族関係は、在留特別許可をするかどうかの判断において、重要な要素と
なり得るものであり、中でも、家族とともに生活をするという
子の利益の保護の必要性は、積極要素として考慮されます。
その上で、特に考慮する積極要素として、以下のもの
(ただし、家族関係に加え、後記3の「素行」として分類される
当該外国人やその家族と、日本人や地域社会との結び付きについても併せて
考慮されているものです。)が挙げられます。
(1) 日本人又は特別永住者との家族関係
ア 該外国人が、日本人又は特別永住者との間に出生した実子であること
イ 当該外国人が、日本人又は特別永住者との間に出生した実子を
扶養している場合、次のいずれにも該当すること
(ア) 当該実子が未成年かつ未婚であること、又は成年であるものの
身体的若しくは精神的障害により監護を要すること
(イ)当該実子と現に相当期間同居し、当該実子を監護及び養育していること
(ウ) 当該外国人が、日本人又は特別永住者と法的に婚姻している場合
であって、夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力し扶助しており、
かつ、夫婦の間に子がいるなど婚姻が安定かつ成熟していること。
(退去強制を免れるために、婚姻を偽装したり又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)
(2)「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」
で在留する者との家族関係
ア 「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」で
在留している者から扶養を受けている外国人であって、
未成年かつ未婚の実子であること。
イ 「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」で
在留している実子を扶養している外国人であって、
実子が未成年かつ未婚であること。
又は成年であるものの身体的若しくは精神的障害により監護を要すること。
また、実子と現に相当期間同居し、子を監護及び養育していること
ウ 「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」で
在留している者と法的に婚姻している外国人であって、
夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助しており、
かつ、夫婦の間に子がいるなど婚姻が安定かつ成熟していること
(退去強制を免れるために、婚姻を偽装又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)
(3) 前記(1)及び(2)以外の家族関係
ア 本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けており、
かつ、本国で初等中等教育を受けることが困難な事情等が認められる
親であって、地域社会で一定の役割を果たすなど相当程度に
地域社会に溶け込んでいる親と同居し、
監護及び養育を受けている実子であること
イ 本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けており、
かつ、本国で初等中等教育を受けることが困難な事情等が認められる
実子であって、地域社会で一定の役割を果たすなど相当程度に
地域社会に溶け込んでいる親が実子と同居し、
監護及び養育している親であること
※ 本邦の初等中等教育機関(母国語による教育を行っている教育機関を除く。)
3 素行
在留特別許可の判断において、当該外国人の素行が善良であること、
すなわち法令を遵守し、社会的に非難されることのない生活を送ることは
当然の前提であるため、積極要素とはなりません。
しかし、積極的要素として当該外国人が地域社会において相当程度活動したり、
本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けているなどの事情により、
現に相当程度に地域社会との関係が構築されていると認められること、
当該外国人に対する将来の雇用主等の第三者による支援の内容が十分なもの
であることなど、地域社会に溶け込み、貢献しているなどの事情が認められる
場合には、その程度に応じて、積極要素として考慮されます。
その中でも、当該外国人が、社会、経済、文化等の各分野において、
本邦に貢献し不可欠な役割を担っていると認められることは、
特に考慮する積極要素となります。
これに対し、消極要素として過去に退去強制手続又は出国命令手続を
とられたことがあること入管法第50条第1項ただし書に該当する
以外の刑罰法令違反に及んだことがあること
ただし書とは、当該外国人が無期若しくは一年を超える拘禁刑に処せられた者
(刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを
受けた者であって、その刑のうち執行が猶予されなかった部分の期間が一年以下
のものを除く。)
第二十四条第三号の二、 不法入国
第二十四条第第三号の三 幇助
第二十四条第第四号ハ 人身取引
第二十四条第第四号オからヨ 暴力・反政府思想
仮放免又は監理措置中に逃亡又は条件に違反したこと
これまで本邦で就労していたにもかかわらず、
適正に納税義務を果たしていないこと
現に生活する地域のルールを守らない、迷惑行為を繰り返すなどしており、
地域社会との関係に問題が認められること
当該外国人の素行が善良ではない場合には
その反社会性の程度に応じて消極要素として考慮されます。
その中でも、特に考慮する消極要素として、以下のものが挙げられます。
ア 集団密航への関与や、他の外国人の不法入国を容易にする行為等
を行ったことがあること
イ 他の外国人の不法就労や、在留資格の偽装に関わる行為等
を行ったことがあること
ウ 在留カード等公的書類の偽変造や不正受交付、偽変造された
在留カード等の行使、所持等を行ったことがあること
エ 自ら売春を行い、あるいは他人に売春を行わせるなど、
本邦の社会秩序を著しく乱す行為又は人権を著しく侵害する行為
を行ったことがあること
(2)当該外国人が、反社会的勢力であること
4 本邦に入国することとなった経緯
当該外国人が適法に入国したことは当然の前提であるため、積極要素とは
なりませんが、本邦に入国することとなった経緯に人道上の配慮の必要性等が
認められる場合には、その程度に応じて積極要素として考慮され、
当該外国人が、インドシナ難民、第三国定住難民、中国残留邦人であることは、
特に考慮する積極要素となります。
これに対し、当該外国人が、
船舶による密航、若しくは偽造旅券等を使用又は在留資格を偽装するなどして
不正に入国したことや、入管法第10条第7項若しくは第11項又は第11条
第6項の規定により退去を命ぜられた者で、遅滞なく本邦から退去しなかった
ことなど、不法又は不正に入国した場合には、その経緯に認められる
帰責性の程度に応じて消極要素として考慮されます。
5 本邦に在留している期間、その間の法的地位
本邦に在留している期間、その間の法的地位については、当該外国人が
我が国に適法に滞在していることは当然の前提であるため、
積極要素とはなりません。
入管法別表第一の一の表又は二の表若しくは
入管法別表第二の表に掲げる在留資格に基づく活動又は
身分若しくは地位を有するものとしての活動を(正規在留者)行っていた場合の
期間が長期であることなどは、積極要素として考慮されます。
これに対し、当該外国人が不法残留している場合又は不法入国後に
不法に在留を続けている場合には、不法に滞在する期間が長期であること
などは、在留管理秩序を侵害する程度が大きいといえ、消極要素として
考慮されます(注2)(注3)。
なお、外国人が認知されて日本国籍を取得後、その認知が事実に反することが
明らかとなった場合には、国籍取得が当初から無効となるため、
当該外国人に日本国籍が認められなくなりますが、認知を受けたことについて
当該外国人に帰責性のない場合(生まれた時から日本人だと疑うことなく
生きてきた。など)には、それまで日本人として生活していた実態等は、
後記9「その他の事情」の積極要素として考慮されます。
この場合において、認知を受けた外国人が
本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けている
などの事情が認められるときは、特に考慮する積極要素となります。
(注2)ただし、不法滞在していた場合であっても、その間の生活の中で
日本人や地域社会との関係を構築している場合は、前記3同様に
我が国との結び付きを示すものとして、積極要素として考慮される
場合があります。
(注3)この場合、在留特別許可の許否判断において考慮する
不法滞在期間の終期は、出入国在留管理庁が不法滞在の事実を認知した
時点となります。
6 退去強制の理由となった事実
退去強制の対象となる外国人は入管法第24条各号に掲げる退去強制事由の
いずれかに該当しているところ、その理由となった事実は、
その反社会性の程度に応じて消極要素として考慮されます。
不法入国の幇助・人身取引・麻薬・暴力など
7 人道上の配慮の必要性
人道上の配慮の必要性は、その程度に応じて積極要素として考慮されます。
その中でも、特に考慮する積極要素として、以下のものが挙げられます。
当該外国人が、難病等により本邦での治療を必要としていること
または治療を要する親族を看護することが必要と認められる者であること
当該外国人が、難民の認定又は補完的保護対象者の認定を受けていなくとも、
その本国における情勢不安(戦争など)に照らし、当該外国人が帰国困難な
状況があることが客観的に明らかであること
当該外国人が、いずれの国籍又は市民権も有しておらず、
入管法第53条第2項各号に掲げる国のいずれにも送還できない者であること
8 内外の諸情勢、本邦における不法滞在者に与える影響
内外の諸情勢、本邦における不法滞在者に与える影響としては、
具体的には、国内の治安や善良な風俗の維持、労働市場の安定等の
政治、社会等の諸情勢、当該外国人の本国情勢、
本邦における不法滞在者に与える影響等が考慮されます。
9 その他の事情
在留特別許可の許否の判断においては、諸般の事情を総合的に考慮するもの
であり、考慮される事情は、前記1から8までに挙げたものに限られません。
例えば、当該外国人が
不法滞在を申告するため、自ら地方出入国在留管理官署に出頭したこと、
入管法別表第一の一の表又は二の表に掲げる在留資格のいずれかの
資格該当性を有し、在留特別許可とされた場合に当該在留資格に
基づく活動を行うと認められることは、積極要素として考慮されます。
これに対し、当該外国人が、退去強制手続又は在留諸申請等において、
虚偽の内容の申告を行ったことや、外国人と自国との結び付きが顕著なこと、
つまり、日本とは結び付きが少ない場合。消極要素として考慮されます。
第3 積極要素及び消極要素の考慮の在り方等
在留特別許可の許否の判断においては、個々の事案ごとに当該外国人の申立て
の内容だけでなく、具体的な根拠の有無や客観的な状況も考慮した結果、
各考慮事情に認められる積極要素及び消極要素を総合的に勘案し、
積極要素として考慮すべき事情が消極要素として考慮すべき事情を明らかに
上回る場合には、在留特別許可をする方向で検討することとなります。
したがって、
特に考慮する積極要素が存在するからといって、
必ず在留特別許可がされるというものではなく、
特に考慮する消極要素が存在するからといって、
一切、在留特別許可がされないというものでもありません。
在留が認められず退去強制令書を発付された外国人は、速やかに本邦から
退去することが原則となるため、退去強制令書発付後の事情変更等(婚姻等)
は、原則として考慮されません。
よくわからない
許可の可能性について相談したい
手続はどうすれば
↓